■労働災害時に損害賠償が請求できますか?

 労働災害を被った場合に労災の請求の他に、使用者に損害賠償が請求

  できますか?

 

ポイント

 

  ◆労働災害を被った労働者・遺族は、労災保険給付を受給するだけで

   なく、「安全配慮義務」という信義則上の義務違反を根拠として、

   使用者に対する損害賠償を請求することもできます。

  

  ◆ただし、損害賠償を得るためには訴訟で使用者の安全配慮義務違反

   を立証しなければならず、また、過失相殺によって損害額が減額さ

   れることもあります。

    さらに、損害賠償が認められた場合、使用者が支払う損害賠償と労災

 給付との間で一定の調整がなされます。

 

労働者災害補償保険法(~「労災保険法」)は、保険の技術を用いて

   迅速に労働災害に対する補償を行うことを目的とするため、その給付

は定型的で制約があります。

 

   よく言われる例ですが、ある人が労働災害によって左手の小指を失った場合、
   その人が事務職の労働者であれば、不便はあるでしょうが仕事ができなくなること
   はないでしょう。
   これに対し、その人がピアニストであれば、職業生命を断たれることになりかね
   ません。
   しかし、労災保険法では、いずれの場合であっても「一手の小指を失ったもの」
   として同じ基準の給付しか受けることができません。
   
   このように労災保険による給付には限界があるため、労働者やその遺族が労働
   災害によって被った全ての損害の補償を求める場合は、労災保険給付の受給と
   合わせて、使用者に対して民法上の損害賠償を請求することとなります。

 

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  使用者に対する損害賠償請求は、多くの場合、使用者の雇用契約上の

  義務違反、つまり債務不履行責任(民法415条)として提起されます。

  債務不履行責任の根拠となる義務については、最高裁の判決

  (最三小判昭和50・2・25・陸上自衛隊事件)によって、使用者は

  労働者に対して「安全配慮義務」、すなわち労働者の生命・身体等を

  危険から保護するように配慮すべき信義則上の義務を負うという考え方

  が確立されています。

  つまり、使用者は、労働者が安全な環境で就労できるよう配慮する

  ことを、雇用契約の当事者としての信義に従った対応として義務付け

  られているのです。

  使用者の安全配慮義務は、平成19年に制定された労働契約法により、

  立法上も明らかにされています(労働契約法5条)。

 

  労働災害を巡っては、使用者がこの安全配慮義務の履行を怠ったため

  に事故が発生したとして、損害賠償を請求する訴訟が提起されること

  が多くなっています。